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石川県立図書館2023年1月29日(日)ライブラリーニューイヤーコンサート(2023年1月29日)

2023年1月29日(日)14:00~ 石川県立図書館閲覧エリア1階

1) シュトラウス,J.II/こうもりのカドリール
2) シュトラウス,J.II/ポルカ「クラップフェンの森で」
3) シュトラウス,ヨーゼフ/ポルカ「休暇旅行で」
4) シュトラウス,J.II/ワルツ「美しく青きドナウ」
5) (アンコール)シュトラウス,J.II/チクタク・デュエット

●演奏
広上淳一*4-5指揮オーケストラ・アンサンブル金沢メンバー(原田智子,江原千絵(ヴァイオリン),古宮山由里(ヴィオラ),早川寛(チェロ),岡本えり子(フルート),木藤みき,松永彩子(クラリネット),アンジェラ・フィオリーニ(ホルン),ダニエリス・ルビナス(コントラバス)

Review

昨年9月,広上淳一さんがオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)のアーティスティック・リーダーに就任して以来,OEKメンバーによる小編成のミニコンサートを金沢市内各所で神出鬼没的に行うようになりました。その一つが,昨年7月に大々的にリニューアル開館した,新石川県立図書館での公演です。

これまで石川県立図書館では館内の「だんだん広場」という,通常の閲覧スペースとは壁で仕切られた場所で行ってきたのですが,今回はニューイヤーコンサートと題して,何と図書館の通常の閲覧スペース内で演奏が行われました。従来の図書館では考えられない企画ということで参加してきました。

この真ん中の部分でコンサートは行われました

こういう思い切った企画が実現可能なのも,新図書館の空間の広さによります。また,電気的に音を拡大しない室内楽編成でのアコースティックなサウンドだから問題ないということも言えそうです(その点では,マイクを使っていたトークの方が影響があったのかもしれません)。私の印象としては,閲覧室内で生演奏を行ったとしてもうるさくならならず,読書や学習をしている人の支障にもなっていなかったのではと思いました。

さて今回の内容ですが,新年(なんとか1月末)企画ということで,ヨハン・シュトラウスの作品を中心とした気軽に聞けるウィーンの音楽が広上淳一さんやOEKメンバーのトークとともに演奏されました。楽器編成は弦楽器5名+フルート,ホルン各1,クラリネット2の9人。新年によく演奏会を行っている,ウィーン・フィルメンバーによる「ウィーン・リング・アンサンブル」と同じ編成でした。

演奏場所は本当に図書館の中心でした。受付カウンターの前だったので,非常に目立つ場所でした。お客さんの方は低めの書架に寄りかかるように立見で聞いている人が多かったですね。私もそうでした。多少足は疲れましたが,肘を乗せられるので30分程度ならば問題はありませんでした。

まず最初に演奏されたのは,「こうもりのカドリール」でした。曲名を知らされずに聞き始めたのですが,アデーレのアリアとか「シャンパンの歌」であるとか,聞き覚えのある,J.シュトラウスIIの喜歌劇「こうもり」の中の曲がいくつか出てきたので,リラックスして楽しむことができました。演奏後の説明によると,ウィーンの宮廷舞踏会用の曲とのことでした。

天井が高いのでどういう感じに響くのかな?と思ったのですが,盛大に響き渡るというよりは,しっかり空間の中に溶け込む感じでした。この図書館の閲覧席はもともと会話可能なので,「うるさく響かない」音響設計がされているのだと思います。

続いては同じくJ.シュトラウスIIによるポルカ「クラップフェンの森で」。この曲でのポイントは鳥の鳴き声。今回はフルートの岡本さんんが2種類ぐらいの笛を吹き分けていました。間近で聞くと,「原田さんのヴァイオリンがしっかり歌っているな」とか「クラリネット2本が良い味を出しているな」…といったことがよく分かりました。

この曲は実は,シベリアで作曲された曲で,当初「パブロフスクの森で」というタイトルだったけれども,その後,ウィーン用に「クラップフェンの森で」に名称が変更されたという説明がありました。この変更は大正解だったのではと思いました。

その後,広上さんが9人のメンバー全員にインタビューをするコーナーになりました。広上さんは常々,「オーケストラメンバー個人のファンになって欲しい」ということを語っていますが,その精神が体現されたような内容でした。アルコールの話が多かったのは,居酒屋好きの広上さんならではだったかもしれませんね。

続いてはヨーゼフ・シュトラウスのポルカ「休暇旅行で」。列車を思わせる快適なリズムに乗って,アンジェラさんのホルンがのどかに響いていました。

その後,石川県立図書館田村館長へのインタビューコーナーがありました。田村館長は前日のOEKの定期公演にも出かけており,東欧音楽も好きということで,これから益々,連携が進みそうだなと思いました。

最後に演奏されたおなじみ「美しく青きドナウ」では,広上さんが指揮をされました。広上さんが指揮することで,テンポの揺れがより大きく,よりしなやかになっていたのではと思いました。ちなみに,終結部は通常の大編成オーケストラ演奏される時のゴージャスな版ではなく,短めの版でした。

お約束のアンコールでは,最初に演奏された「こうもり」に対応する形で,「チクタク・デュエット」という曲が演奏されました。こちらも「こうもり」に出てくる軽快なメロディを使った心地よく流れる演奏でした。

広上さんは,「この図書館は,ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールに似てる」とおっしゃられていましたが,このグルッと取り囲むような雰囲気での演奏は新鮮でした。新しい発想の図書館ということで,イベント面についても,今後も色々な試行を行っていって欲しいと思います。

PS.

ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールですが…画像を調べてみると確かに雰囲気が似ています。プロムスの会場として知られていますが,ヒッチコックの映画「知りすぎていた男」にも出てきますね。映画「ブラス!」では吹奏楽の聖地のような感じで描かれていたと思います。と書いているうちに確認してみたくなりました。

この日は徒歩で図書館へ。「裏口」から入りました。



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